テレパシーの亜種

ここを読んでいないあなたに伝えたい

ストリップ劇場で出会ったいくつかの曲のはなし

2016年7月に広島第一劇場でストリップ童貞を捨てまして(記事)、2016年12月に浅草ロック座に2017年3月に東洋ショーに遠征もし、ストリップ劇場通いが始まりました。といっても月に1,2回程度の無理のないペースではあるのですが。
なぜ通うのか、裸が見れるのは保険みたいなもので、踊りを見るのが主な目的。そのうえで踊りの構成を担う選曲に最も注目しています。
今件では10カ月程度の劇場通いのなかで出会ったいくつかの曲について書きました。ストリップ演目への曲の使用許諾に関してグレーなのかなと思うので曲目も踊り子さんもあえてぼかして書きます。
※貼り付けたYouTubeは無関係です

歌声に耳を澄ます

ストリップにおける「かぶり席」は、盆(せり出した回転舞台)に面した席になるのだけど、幸運なことにこのかぶり席に座れた時のエピソード。
その人を初めて見た時の印象は、ボン・キュッ・ボンの不自然なくらいフィギュア体型だけどそんなに踊りは上手くないな、といったものだった。2度目にかぶり席で同じ演目を見たときはガラっと印象が変わった。アイドル衣装で出てきて途中で袖奥で水着に着替え、いくつかの懐かしいアニソン楽曲に合わせて踊り、限りなく裸に近い格好で盆に立ったときにこの曲が流れてきた。銀河の妖精の代表曲ともいえる愛しい人との別れを歌った楽曲。そこでストリップではあまりないことが起こった。歌ったのだ、歌声が聞こえてきたのだ。歌うなんて滅多になく、マイクも無いからかぶり席でもない限り歌声が聞こえてくることはない。上手いとかそんな判別ができないくらいに微かに聞こえる歌に神経を研ぎ澄まし、目を皿のようにして踊りを見る。初回に見た印象をガラリと刷新してくれた。踊りは相変わらずあんまり上手くはないのだけど。

“プロ”のタンバリン叩き

ストリップでは客がタンバリンを叩いて舞台を盛り上げている。誰でもやっていいとは思うけど、舞台演出や曲によってはぶち壊しになってしまいそう。多くの「タンバリンさん」は曲構成を把握し、叩きどころ(表拍or裏拍)止めどころをかっちり決めて叩いてる。
演歌楽曲は例えサビであってもタンバリンの叩きどころが無いことが多い。八百屋の女のことを歌ったこの曲もそうであるあずなのに、客席のどこからかタンバリンのシンバル音が聞こえてきた。Aパートの拍間に絶妙なタイミングで切れよく「シャン」と入れてくる。プロ並みのパーカッションセンスを発揮して曲の邪魔にならない引き立て役をやっておられた。もちろんサビではわいわい叩いておられた。
顔もわからぬ名タンバリン叩きに、客と客という関係性で出会った。また会うこともあるのかな。

物語を踊る

周年作品というものがある。踊り子さんのデビュー週を自ら飾るとっておきの作品。この作品を見たのは周年週ではなく、おそらくその翌月だったんじゃないかな。
音頭を踊り、着替えてアンセムに乗って再登場されたその方はランナーの格好をしていた。ゼッケンにはその踊り子さんのストリップ歴と同じ数が記されている。そしてかかってきたのがゼッケン7と日の丸を背負って走った選手についての歌。歌詞の後ろめたさに思わず面喰ってしまった。この曲で踊るのかと。舞台の上の踊り子さんは歌詞以上の苦悶の表情で走るマイムをしていた。まるで舞台が競技場になったような、そんな風景が見えてくる。ゴールのときは晴れやかな表情。そして、盆でのポージングはウイニングランをするかのようだった。

番外編

暗転してミラーボールが回り始めて、この曲が流れる。一日に四回行われるショーの始まりを告げる音楽は、手品のBGMでおなじみのこの曲。エレガントでエキセントリックなパッションステージへ誘ってくれるアナウンスはとある踊り子さんが吹き込んでくれたという。録音・撮影,携帯電話の使用は禁止,踊り子さんの衣装や体に触れるのも禁止、マナーアナウンスもこの曲に乗せて軽やかに行われる。

広島第一劇場は2018年2月20日までの限定で営業再開しました。ストリップを観たことのある人もない人も、劇場の最後の灯りをその目で見届けてください。
https://www.hiroshima-daiichi.jp/